石原慎太郎氏1938年生まれ、2022年2月1日死去89歳
「私という男の生涯」
図書館で借りてきました。
死後に発売される目的で書かれたもので原稿のチェックは4度済ませ、幻冬舎の見城徹氏に託して2022年6月に出版。太陽の季節で注目を浴びて若くして作家デビュー、国会議員、東京都知事、石原裕次郎の兄として輝かしい実績を残されています。YouTubeを視聴していると国益から見た辛口の発言動画が今もたくさん残されており感動します。
80歳を過ぎて過去をたどり死ぬ前に自分を確認しておかなくてはならないとまとめられており、誰しも避けることができない死について啓示を与えてくれていると感じました。釈迦が説いたいかなる物事もともに移ろい変化する色即是空、空即是色。難病に冒されながらも宇宙物理学者ホーキング氏が辛うじて動く指先でキーを押しての講演と質疑で地球のような高度な文明を保有している惑星がいくつあろうかの問に、全宇宙ということなら200万ほどと答え、ならばなぜ地球に到達しないのかとの問には文明が進展すると自然の循環が著しく阻害されてしまい、その惑星は不安定な状態となり瞬間的、100年ほどで消滅すると答えたとの二十五年ほど前の東京での講演のことなど興味深い記述がありました。21世紀に入りコンピューターが進化を続けAIが人間を越えてしまう、このままだと地球が消滅に向かっているのかもと考えてしまいました。
自ら好色であると数々の女性遍歴の記述にも紙面を割いています。
ジャンケレビッチの労作「死」の中で言っていたように、死は私たちにとって最後の未知であり、最後の未来なのだから自分を忘却してしまって死ぬのだけは嫌だ。何もかも覚えたまま、それを抱えきって死にたい。この著書はまさにそれを実行したものだと思います。読む価値ありの一冊でした。
石原慎太郎氏の記憶力、表現力、行動力どれを見てもコンピューターで言うCPUもROMもRAMもストレージも素晴らしく、平凡な私のものとはかけ離れており異次元なことばかりでしたがたいへん興味深く読ませていただきました。御冥福をお祈りいたします。